昔は日本にも面白い政治家がいて、色々な逸話を残している──
現在では知る人も少ないが、三木武吉と云う政治家がいた。筆者の大好きな政治家である。
有名な話で、吉田内閣時の分裂選挙、所謂「抜き打ち解散」による選挙で、彼は対立候補から、次のような個人攻撃を受けた。
「名前は云わないがある有力候補の如きは、妾を四人も持っている。かかる人物が、国政に関与する資格があるだろうか?」と。
立会演説会だったので、三木武吉もその場にいた。
次に登壇した三木は少しも慌てず、
「わたしの前に立ったある無力候補が、『ある有力候補』と申したのは、不肖この三木武吉であります。なるべくなら皆さんの貴重なる一票は、先の無力候補よりは、有力候補たるこの三木武吉に、と、わたしは考えます。
なおここで、先の無力候補の数字的間違いを訂正しておきます。先の無力候補は、わたしに四人の妾がある、と申されましたが、事実は五人であります。五を四と数え間違える如きは、小学校の一年生といえども恥とすべきであります。
ただしこの五人、今日ではみな老来廃馬とあいなり、役には立ちません。が、これを捨て去るが如き不人情は三木には出来ませんから、みな今日も養っております」
時代が時代だけに、いささか差別的な表現もあるが、この三木武吉と云う政治家の面白味は分かっていただけたのではないかと思う。