計算の不得手な老紳士

 ある老紳士が、ニュー・ヨークの市電から降りる際に、運賃を支払った。運転手が釣り銭を渡して、間違いないか確認するように云った。

 その老紳士は何度も勘定し、計算が合っているかどうか、後ろの客に確かめ、ようやく納得してバスを降りかかった。

 その老紳士にバスの運転手はいたわるように云った。

「あんた、計算は得意じゃないみたいだね」

 老紳士──アルバート・アインシュタイン──は、恥ずかしそうに笑って、ステップを降りて行った。